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ZL1WY / ZL7  Chatham Islands


風の島 チャタム島 その8

ZL1WY 三宅 広幸

 12月5日の朝、空港への出発の準備が整ったので、チェックアウトをするためにValを探します。
彼はちょうどフロントにいたので、精算をしながら、私は出発時間を尋ねました。
すると「ここを9時15分頃頃出ますよ」との返事。
え?フライトは9時30分じゃないの?と思ったけれど、迂闊にもこの時はまだフライト時間の変更に気が付きませんでした。
政府職員の4人も、それぞれが準備を整えてホテルのデッキで待っていました。
彼らはみな、Chatham名物の伊勢エビの入った箱を持っていて、中には本来の荷物よりも大きい箱の人もおりました。



右側の男性がVal
肩に担いでいるのがChathamの”米”であるポテトの袋

09:20にホテルを出発して、来た時の道を逆にたどって空港へ向かいます。
運転はValで、助手席に私、後部席に4人組が乗ってオジサンばかりでピクニック気分です。
何とも云えない、和やかな雰囲気が、たまらなくこの島の印象を良いものにしてくれました。
また来ることが出来たらいいなぁ....


多分、いつも強い風が吹き続けているので、この島には背の高い木が育たないのだと思います。
荒涼とした平地に、ぽつんと空港の位置を示すかのような吹き流しと、小さな小屋が見えてくると道は急に舗装路に変わります。
来た時と同じ飛行機が滑走路の隅に止まっていて、数人の人影が見えます。



常時強風にさらされた証拠
背の高い木は少ないが、あってもこんな姿になってしまう

車に乗っている時は気付かなかったけど、ドアを開けた瞬間に、もの凄い風が吹いていることに気付きます。
これは来た時よりもすごい。
 慌てて荷物を抱えて小屋に飛び込むと、中には既に10人程度の人がチェックインを待っていました。
あれ?カウンターの女性はどこかで見たことがある...と思った瞬間、気が付きました。
この人は来る時のアテンダントです(客室乗務員)
と云う事は、この飛行機にもこの人が乗るのかな?
しばらくして順番が回って来たので、チケットを渡したところ、荷物を皆ここに載せろ、と大きな秤を指さします。
あちゃ〜これはまずい事になった、と思ったけれど、今更どうしようもないので黙って載せる事にしました。
オバサン曰く「超過料金を$35払って下さい」
「えっ?」
「荷物が重すぎるので、$35を払って下さい。分かりますか?」
「はい、分かります。現金で払います」
私はすぐに財布から小銭を出して云われた通りに支払いました。
オバサンは、私が意味を理解できないと思った様ですが、そうではなくて、あまりに安いので驚いただけなのです。
$35(約2000円)なら云う事はありません。



Chatham空港の建物
見かけよりずっと小さい

 チェックインを終えた時間が10:00少し前ですが、一向に出発準備が進んでいない状態に、さすがにおかしいと思い、近くにいた4人組の1人のMikeに訊いてみました。
「Mike この飛行機は一体何時の出発なんだい?」
「10:15だよ」
「えっ?09:30じゃなかったの?」
「違うよ、知らなかったのかい?」
「困った、オークランドへの乗り継ぎが13:00なんだ、間に合うかな?」
「それはちょっと厳しいな。乗り換えに時間が足りないかも知れない」
そうです。
Chathamはニュージーランド本島より、45分進んだ時間を使っているので、定刻で出発すればもちろん間に合うのですが、今の様子だと10:15のフライト自体が不可能である事は誰が見ても分かる事でした。

結局、Chathamを飛び上がったのが11:00でありました。
来る時の事を教訓にして、今度は搭乗を急ぐことにしました。
思った通り、自分の好きな場所に座れるので、後部の窓際に座る事にしました。
来た時よりも少し多い人を乗せて、飛行機は機首を風に立てて轟音と共に走り出し、そして浮き上がりました。
窓から見えるChathamの風景は、草に覆われている起伏の多い土地が延々と続いています。
その向こうには環礁の浅い海が見えるだけです。
飛行機はすぐに雲に入ってしまって、あっと云う間にChathamは見えなくなってしまいました。

 飛行機は順調にフライトを続けていましたが、もうそろそろ着陸態勢に入るかな?と云う頃になって、オバサンアテンダントが何やら全員の前でしゃべりはじめたのです。
何を云っているのか聞き取ろうと、耳を澄ませていると乗客からは、溜め息とも苦笑いともつかぬ声が上がりました。
どうもウェリントンではなく、別の空港に着陸するらしいのですが、肝心のその理由と場所が聞き取れなかったのです。
その後、すぐに飛行機は高度を下げて、あっと云う間に小さな町の、小さな空港に着陸してしまいました。
低い雲だったせいか、飛んでいる時は分からなかったのですが、地上は激しい雨が降っていて、着陸と共に窓から外が見えなくなってしまいました。
飛行機のドアが開いて、乗客は皆ぞろぞろと外に出ていってしまって、残ったのはMikeと年輩のご夫婦だけになりました。
その内、Mikeも降りる準備をしているので、どこに行くのか?と尋ねたら、「君はそのまま座っている方がいい」と云って、降りていってしまいました。
結局、老夫妻も降りて機内に残ったのは私1人だけになってしまいました。

 飛行機の横には給油車がやってきて給油を始めたので、これは簡単には飛ばないぞ、と覚悟を決めて待つ事にしました。
 コックピットから襟章を付けたクルーらしき人が来たので、少し話しをしたら、ウェリントンが天候不良で着陸できずに、多くの飛行機がウェリントン上空で待機しているため、この飛行機もその渋滞(?)が解消されるまでここに止まっている、と説明してくれました。
あぁ、これで予約しておいた13:00のオークランド行きの飛行機へ乗り継ぐことが絶望的になった訳です。
いくら心配してもどうにもならないので、あきらめるしかないし、後は別のフライトを考える事にしました。

 30分くらいしてから、ふとトイレに行こうと思って、後部席へ歩いて行ってから驚きました。
何と!この飛行機にはトイレがないのです。
そうかぁ、だからみんなこの飛行機から降りたんだ...きっと。
そこでさっきのクルーにトイレの場所を訊いたら、ターミナルビルに行けと云われて、とうとう私も飛行機を降りる事になりました。

 この小さな飛行場に降りてから1時間半以上が過ぎてから、やっと再搭乗の指示があって機内に戻りました。
天気は回復する様子もなく、雨の激しく降る中を再びウェリントンへ向かって飛行機は離陸して行きました。
それから約15分で雨に煙るウェリントン空港へ無事に降り立ちました。
例の4人組ともここでお別れ、堅い握手を交わして別れました。
彼らも予定していたフライトに間に合わず、これからカウンターで変更の手続きをするはずです。
もちろん私も、ニュージーランド航空のチケットセンターで乗り継ぎ便遅延のために予約便に乗れなかった事を説明して、新たな便を手配してもらいました。
あまり時間もないので、空港内で遅い昼食を簡単に摂ってから、来る時に立ち寄ったインターネットカフェへ行き、再び掲示板にメッセージを書き残しました。
その後、やっとフライトが決定して、変更便は16:00と決まりました。
これで今日中にオークランドへ戻れる事になりました。

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