This site devoted entirely to Amateur Radio


ZL1WY / ZL7  Chatham Islands


風の島 チャタム島 その7

ZL1WY 三宅 広幸

12月3日の朝、今日も快晴ですが、やはり風が強い。
シャワーを浴びてから、今まで行っていないところを歩いてみる事にしました。
ANZ Bankの角を南東に入る道を、丘に向かって歩いて行くと、300mほど登った右側にロッジがひとつあるのに気が付きました。
 少し粗末な感じがしないでもないが、反面、周りをみるとハムにはこちらの方が向いているかも知れないと思いました。
周りはすべて草原で、私の滞在しているところよりもずっと高い位置になるので、50MHzもHFも、どちらにも良いかもしれません。
 更に行くと、Radio STNと書いた看板があって、パラボラもあるが電話の中継局だろうか?
外から見る限り、職員がいるのかいないのかの判断ができない。
不思議なステーションでした。



これ、Chatham流のペット
Val邸の裏につながれた首輪付きの子牛

 登るにつれてますます風が強くなり、もう帽子をかぶっていることは全く出来ない状態になってしまった。
道の両側には羊が放牧されており、皆私をじっと見ている。
何だか観察されているのは、こちらの様な気分になってくるのです。
また、所々で馬を見かけるが何のためなのだろうか?
 頂上まで行ったが、立っているのも辛いほどの強風に負けて、これ以上進むことを諦めて戻る事にしました。
何も遮るものがないので、体感的には風速20m/秒を超えているのではないかと思いました。
今日は、この島へ来て一番風の強い日の様な気がします。
丘から眺める内湾ですら、大きな波頭がはっきりと見えている位です。
13:00を回ったので、さぁ昼食を食べに行こう!
今日のランチは、コールドチキンにローストポーク、たこのマリネ、マッシュルームと豆の煮物、カブの赤ワイン漬けでした。



見られているのはどっち?

 午後もコンディションが今ひとつ良くないので、あまり局数を稼ぐ事ができないまま夕食の時間を迎えてしまいました。
昼に沢山食べたのであまり食欲がないけれど、Valが誘いに来るのでお付き合いをした。
くだんの4人組と相席して、今日はステーキを食べました。
ボリューム150点くらいで、きれいに食べきれなくて申し訳ないことをしました。
ワインでホロ酔い気分になってレストランの外に出ると、まだ明るい海に漁船が木の葉の様に揺れている。
何という風の強さでしょうか。
内湾でこれだから、外洋はさぞかし時化ている事でしょう。
部屋に戻りシャワーを浴びてから再びバンドをワッチする。
やはり余り良くない感じである。
今までで、多分2000局程度はQSOに成功しているはずですが、このままではKH4の時の、5000余局を越えるQSOには程遠い感じがします。
あと1日半で、一体何局上乗せできるでしょうか?
最低でも3000局は越えたいところです。

昼時にValに会ったら、私あてに電子メールが来ていると云われて、「はて?誰から」といぶかりながら彼と一緒に事務所へ行きました。
差出人は、ZL3TY Bobで、昨日の日付でした。
Bob曰く、私のビーコンを受信して割り込んだが、QSOできなかった、とても残念だった、と書いてありました。
ログで調べて見ると、その時間は外出している時間帯でした。残念。
でも結果的にQSOできたので、何とか帳消しにしてもらえそうです。

12月4日、今日は霧雨になりました。
これがChatham名物の霧の事かとヘンに納得してしまいました。
しかし風の強さは変わりない様でした。
08:30に起床してから、ずっとIBP(国際ビーコン周波数)をワッチしているが、ニュージーランド本島のZL6Bすら聞こえない。
何というコンディションの悪さでしょうか!
やはり北半球とは伝搬が違うようですね。
50MHzのオープンがなくて、今頃日本ではやきもきしていると思いますが、しかしこればかりは仕方ないので余り考えない事にしました。
私のビーコン装置は、元気に、そして淡々と日本へ向けて電波を発射し続けていたのですから。

朝10:00過ぎにValを訪ねました。
昨日頼んでおいたレンタカーを受け取るためです。
レンタカーと云っても、左のドアミラーはちぎれ飛んでいるし(電線ムキだしなので、本当にどこかにぶつけて、ちぎれ飛んだのでしょう)、ラジエーターグリルはボコボコになっている。
おまけにタイヤはツルツルで、それを見て思わず吹き出してしまいました。
しかし、このオンボロギャランも、一旦走らせると力もあって、ダートを勢い良く飛んで行きます。



こんな道が延々と続きます。

タイヤがこんな状態なので、カーブですぐに姿勢が変わってしまって危ないが、ハンドルを握っていると、遠い昔に忘れてしまった血が騒ぎ出します。



私が借りたレンタカーのギャラン
左のドアミラーが吹き飛んでいる

荒涼とした原野に風が吹いている。
そこには羊の群れと、若干の牛とヤギがいるばかり。
2度ほど羊の群が移動するのに出くわしたが、それを見て本当に牧羊犬は賢いと思いました。
はるか後ろからトラクターで群れを追っている人間の、口笛ひとつで右にも左にも動く姿は感動ものです。



これでも小さい集団
通過待ちに10分かかった。


種類の事は知らないのだが、1匹の毛足の長い犬が、その純白の毛を泥で真っ黒にしながら羊を追っている姿は、何とも美しくもある。
15:00までの予定で借りた車だが、実際には時間が足りなかった。
狭いと思っていた島だけれど、意外に広く大きい島で、全部を回りきる事ができませんでした。



これは現役の牧羊犬ではありません
引退組です
でも、とてもおりこうさんです

 この日の夜、最後の夕食を摂りにレストランへ行くと、くだんの4人組が私を待っていて、またしても一緒に食事をしました。
ワインを傾けていろいろな話をしました。
私の英語力ではとても細かい話はできませんが、それでも彼らは私の言葉に耳を傾け、一生懸命に理解しようとしてくれました。
おいしい食事とおいしいワイン、本当なら夜の更けるまで飲んでいたい気もしたのですが、やはりハムの血(?)がオペレーションを選ばせました。
彼らとずいぶん飲みましたが、とうとう最後までお代を払いませんでした(笑)
この後、部屋に帰ってから全力でサービスする事になります。
特に、この日の14MHzは快調で、大きなパイルが続きましたが、明日の撤収もあるので後ろ髪を引かれながら、現地時間の深夜02:00でQRTしました。
この後すぐに寝付けず、結局朝までうとうとして過ごす事になりました。

12月5日の朝、05:00からアンテナの撤収を始めました。
やはり1人では大変ですが、時間をかけてゆっくりやりました。
初夏だというのに、早朝は指先を縮こませるほどの低い気温です。体を動かしていなければ寒くてぶるぶる震えるところでしょう。
08:00にはすべての荷物をまとめ終わって、いつでも出発できる体勢になりました。

   1 - 2 - 3 - 4 - 5 - 6 - 7 - 8 - 9     

| Back |