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VK9XEクリスマス島1週間の旅



                 斎藤邦夫 JA8VE/VK9XE

 

●準備

インドネシアのジャカルタでの任期も残り少なくなり、以前三宅さんから、そこからだったらクリスマス島あたりへはすぐ行けそうですね、と言われていた話を、にわかにやってみよう!と言う気になりました。
いつも一緒に出かけていた大和ARCのメンバーにも話しましたが、日本はこれから年度末にかけて忙しい最中ですから、お仕事をしている方には一寸無理、結局一人で出かけることにしました。

●フライト、ホテル予約

 今回は、インターネットでオーストラリアのパースにある、日本人の方がやっているダイバー向けの旅行社にメールで聞いて、パックツアーとして、航空機、ホテル等すべて含めて面倒を見て貰いました。
 ただ、今回手続きをしてみて分かったことは、航空機の予約等は、クリスマス島にあるChristmas Island Travel Pty Ltd(Web-site:www.citravel.com.au)へ、またクリスマス島そのもの及びホテル予約等もhttp://www.christmas.net.au/ へ直接アクセスして予約するのがレスポンスも確実性も遙かに優れています。

●ライセンス取得

 Australian Communications Authorityの、アマチュア無線ライセンス取得についてのWeb-site(下記)の記述はとても親切丁寧で、申請書もダウンロードして簡単に記入できます。
     [http://www.aca.gov.au/publications/info/visiting.htm]
ただ、ここには、3ヶ月前に申請せよ、又電子VISA(ETA*)の場合は航空券のコピーを添付せよとありました。
通常、航空券が本人の手元に来るのは、出発の1〜2週間前ですから、これではとてもダメです。
そこで私は、日本人はオーストラリア入国のVISAはETAだけでよいのですが、敢えてジャカルタのオーストラリア大使館でVISAを申請して、このコピーを添付しました。
申請時2ヶ月半前でしたが、とても早く約3週間でライセンスが送られて来ました。

[ETA*:インターネットで本人が登録するだけで入国申請が出来る仕組み]


●クリスマス島のQTH

 当初、クリスマス島ってどこにあるの?地図に載っている?と言う位、分かり難い場所で戸惑いました。

 クリスマス島は、インド洋の概略 東経105゜40′南緯11゜30′に位置する周囲80Km程の結構大きな島です。
VKのPerthからは2600Km(ジェット機で4H)ですが、ジャカルタからは360Km、何とジェット機で1Hの距離にあります。
しかしジャカルタからは、毎週土曜日に1便飛んでいるだけです。
 島は、60%が国立公園で、12月上旬には森に住む赤いカニが産卵の為、海へゾロゾロ下りてくるので有名ですが、やはりこの島はマンタやジンベイ鮫が見られると言うので、世界のダイバーにとって有名なところです。


●いよいよ出発

 インドネシアは、丁度イスラムの断食月が明け連休になった12/7の土曜日朝9時、タクシーで空港へ出発しました。
いつもながら、搭乗時の荷物の重量が心配でした。今回はスーツケース1個と、アンテナの梱包1個、両方で25Kg程度と見積もって荷造りしました。
と言うのも、資料や航空券に預ける荷物は20Kg、キャビン持ち込みは5Kgまでとありましたので、25Kgなら交渉の余地はありそうとの作戦でした。
 空港へは、私のアパートからタクシーで丁度30分で着いてしまいます。
11:15発の国際便ですから少し早く行ったのですが、カウンターは既に開いていて向こうからMr.Saito?と声をかけてくれました(なかなか調子がいいぞ!)。
荷物は重量計が28.5Kgを指しています(何を後から追加したかなあ?)。でも何も言われず拍子抜け?そのまま出国審査を経て待合室へ、でもまだ待合室が開いていません。
重い荷物は預け済み、無線機のカート15Kgと背中のザック(数Kg)だけですから楽なものです。
30分位搭乗待合室の前で待って中へ、搭乗開始は出発時間の11:15、機体はB737-200(96席)十分に大きいジェット機です。
客は全部で12〜3人、なんと私の席はビジネスクラスでした。乗り込むと即出発Take offは11:34でした。

●いよいよクリスマス島
 
 機内であわただしく軽食が出て、12:26クリスマス島へ到着。
ジャカルタと時差はなく、正味55分位のフライトでした。
入国審査の係官は女性で、とても愛想が良く歓迎してくれました。しかし通関は厳しく、特に食品、薬等を聞き、荷物は全部開けさせます。カップ麺が3個あったのですがOKでした。

(ジャカルタ−クリスマス島を運行しているB737-200 機体はジャカルタの航空会社の一つであるMerpati社の機体ですが、運行はチャーター便として別な会社で運行されています)


(クリスマス島飛行場のターミナルビル 前に海軍のヘリが1機常駐していました)







空港には、お世話になSunsetホテルのGary(ギャレイ)氏が出迎えに来てくれていました。
同じ便で、スイスから来た若いカップルが同じホテルでした。
彼らは既にレンターカーを手配してあって、荷台の付いた彼らのバンに私のアンテナを乗せ、Sunsetホテルへ向かいました。

(The Sunset ホテル ホテルと言うより全部で10部屋ある宿泊施設です。私が泊まった部屋はかねてお願いしてあった写真手前に面した部屋で、前に子供用のプールがあります。早速プールサイドに21MHzのDPを上げました。右側にはまた別な宿泊施設があり、左側は道路です)

 Gary氏は空港からの帰路、ついでだからと遠回りして島の主だったところを案内してくれ、14時頃Sunsetに着きました。
Gary氏に頼んであった12VのBattery(リニア用の電源)も用意してくれてあり、充電器まで貸してくれました。
 海岸に面して広い敷地をイメージしていたのですが、この島は周囲がほとんど20m以上ある切り立った崖で出来ている由、建物がある場所は以外と敷地が狭いことが分かりました。
ただ、Sunsetホテルは、南北に開けていることと言う条件は確かに満たしていました。
 早速プールサイドに21HMzのアンテナを設置しして電波を出すと、なんと強烈なTVIが出ます。100Wでも出るのです。
私の無線機には、自作のLPF(高調波は100db以上落とせる)が付いているのですがダメでした。この島のTVシステムはVHFで4CH、そして同じ4CHをUHFでも送信しています。
TVの受信アンテナはどこにあるの?とGary氏に屋根まで一緒に登って見せて貰いましたら、なんとTVのアンテナから送信所タワー方向の直線上に21MHzのアンテナを建てたことが分かりました。しかも、TVアンテナから20m以下の距離です。
 思うに、各部屋にTV信号を分配している分配増幅器が、私の送信信号(desired signal)で歪みを起こしているのであろうと推察しました。
Sunsetの横も、すぐ他の宿泊施設がくっついていますし、手前の駐車場だけがスペースがありますが、かなりの距離があって同軸が足りません。
これはTV信号の分配機にHPFを入れなければ、ここでは運用出来ないかな?と言う最悪の予想が頭をよぎりました。

 初日でもあり、日本では皆さんがお待ちですし、気がきでありません。
50Wまで絞ればまあ一寸画面にシマシマが出るくらいですので、これで少し運用しました。
しかし夜には、子供づれも泊まっていたようですし、娯楽は何も無い島ですから、運用は遠慮して私もこの日はTVで007を見ました。夜の11頃、泊まり客が全て寝てしまったのを見届けて、TVIは出るのですが、21MHzで少し運用して、何とアフリカのTZ6JA小原さんとラグチューをしてしまいました。
小原さんは2003年1月号の59誌に「長遅延エコー(LDEs)前編」なるとても興味深い記事を寄稿されています。

 三宅さんから、今回のExp用にと送っていただいた資料の一つに、クリスマス島を中心にした大圏地図がありますが、これを見ると興味深いことに、日本もアフリカ東海岸も同じ距離なのです、数10Wでも良く聞こえる道理です。
ここではアフリカも日本と同じくらい雑魚?、と言うことが良く判りました?

斉藤OMにお送りした、Azimuth Map(大圏地図)と同じもの。
この地図を作るソフトウェアの使い方は、当トップページからどうぞ!
画像をクリックすると、拡大図が見られます。

 TVIで一時は「こりゃあ ここで1週間どうしようか?」、と絶望的になりましたが、気を取り直してTVのアンテナに対し横の位置、すなわち距離が取れないからには一番結合が少ない位置にアンテナを建ててみることにしました。

(Sunsetの前の道路の向こう側にアンテナを移しました。ここで21MHzでTVIが出ないことが確認出来たので、21MHz DPの支柱を利用して14MHzのワイヤーDPを張りました。21のアンテナ支柱から建物まで14MHzのDPがめいっぱいです)

 Sunsetホテルはまだ新しい施設で、一部未だ工事をしていました。
部屋は綺麗で調度品も清潔です。
天井にはゆっくり回るファンがあり、むろんクーラーも付いています。お湯も出ますし冷蔵庫も部屋に付いていました。

(VK9XEのセットアップ 机も椅子もあって快適です。無線機の上のコールサインプレートは三宅さんからのプレゼント。机の下にはフローテイング充電しながら使う12Vの(車用の)Battery)

(運用中のVK9XE コールサイン入りのTシャツも未だ汚れていません。赤い短パンは、自宅のある大和市鶴間の歩行者天国の出店で100円で買ったものです)

 2日目に、21MHzのダイポールの場所を移したところ、幸いTVIは出ないことが判り一安心。
続いて14MHzも張って確認したところ、OKでした。
このセットアップで、ほとんどの期間運用することにしました。
日本やEUとは、コンディションにも助けられましたが、リニアを軽く使って、SSBでとても楽な運用が出来ました。
 アンテナの設営等は当然一人でやる訳ですが、一人と言うのは「一寸そっちを持っていて!」と言うことが出来ません。
当然炎天下時間がかかり、日差しの強い戸外作業は結構きついものがあります。
夕方日没近くになると、ぐっと涼しくなり、夜は実に快適な気温になるのですが、Openしていない、しかし暑い!昼のうちに作業をしなければならないのには参りました。

 持参した同軸ケーブルは、30m 1本、20m 1本、7m 2本、バラン2個ですから、3.8や3.5もこの持参した材料の範囲で張れるところに張って見ましたが、激しいTVIを起こし断念せざるを得ませんでした。 
 色々考えた末に、帰る日の前日13日に、今まで使っていた21MHzと14MHz DP用の同軸ケーブルを2本つないで少し離れた駐車場のスペースに7MHzのワイヤーDPを張ってみることにしました。
幸いTVIは出なかったので、この日は7MHzのみの運用とし、約160局とのQSOが出来ました。
 全期間JAはもとより、EUの信号も非常に強く、沢山の方々に呼んでいただき、楽しいExpeditionを行うことが出来ました。全QSOは約1500でした。

■クリスマス島諸々

 この島は、主にダイバーの人達が来るところで、どこの宿泊施設も食事は付いていません。
3度の食事共、車で出かけ、夜はパブレストランでみんなで楽しくおしゃべりして帰るとすぐ寝る、と言うスタイルの様でした。
子供連れも居ましたが、子供向きのリゾート地ではない感じです。
 12月上旬は丁度赤いカニが夕方森から下りてきて、朝方又森の方へ帰ると言う時期でした。

(夕方森から海の方へゾロゾロわたる赤いカニ 甲羅はとっても固く他の動物は見向きもしません。この道路はカニの渡る時間帯は通行止めになっていました。歩くのはOKでしたがうっかりすると踏んづけそうになり気を使いました)

(部屋での運用中視界にふと動く物が入ってきて、見るとこのカニです。島中どこにでも居ました)

 島にはカニばかりではなく、鳥達も沢山居て、高い空を悠々と飛んでいたり、すぐ目の前に卵を抱いていたり自然観察が好きな人には魅力のある島です。

(この方はマックさん、傷ついた鳥達を面倒見ていて小魚を与えていました。今はもう飛べる鳥まですぐ近くへ寄ってきて甘えた声で餌をねだっていました)

(この鳥はGreat Frigate 悠々と大空を飛ぶのを見て思わずジュラシックパークの様だ!と言ってしまいました)

(Visitor Information CentreのFred氏 ここでは旅行者のための色々な情報を提供してくれますし、資料も揃っています。自転車も(有料で)貸してくれます)

(クリスマス島のラジオ・TV局のManaging DirectorであるBrian Hill氏。この島にはアマチュア無線に適したところは無いの?とInformation CentreのFred氏へ尋ねたところ、紹介してくれたので訪問してラジオ局を見学してきました)

(クリスマス島に住む2人の日本人のうちの1人である浜中氏 Brian氏が紹介してくれました。かれはここに住み着いてダイビングの案内やインストラクターをしています。素敵なオーストラリア人の奥様が居ます)

今回のExpは、1人旅とはいえ、十分なサービスが出来ず心苦しい結果に終わりましたが、次の機会にはよりがんばりたいと思っております。
皆様のご期待、励まし本当に有難う御座いました。 

(プルメリアの花 気候が合っているのかとても綺麗に咲いていました)

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