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BN0Fの台湾B級日記


「日本」の存在感の大きさ

台湾の消費者は、とかく「日本」に関心がある。
デパートやショッピングモールには欧米からの輸入品もあるにはあるが、キャラクターグッズや家電品を始め、衣服やアクセサリー、化粧品やちょっとした日用品など、品数でも売れ行きでも圧倒的に日本製品に軍配が上がる。
台湾商品であっても、商品名にひらがなを使うなど、日本風の印象を出すことが、ここではマーケティングの重要な戦略になるのだという。

最近では、景気低迷のあおりを受けているマクドナルドが、おしゃれなメニューとして「和食」を始めた。
一枚の皿の上に白いご飯(てっぺんにはゴマがふりかけてある)とおかずを乗せたもので、カレーライスの変形のようなイメージだ。
メニューは「和風焼肉飯」「和風猪排(とんかつ)飯」など4種類ある。
いわゆるテリヤキ風の味つけで、「和食」を銘打つほどではないように思うが、それでも台湾マクドの売れ筋になりつつあるのだという。
高校生のカップルがお互いを見つめ合いながら、マクドでおしゃれな「和食」を食べている姿は微笑ましい。

その最たるものといえるかどうか。台湾も冬空を迎えて風邪引きのシーズンとなり、テレビでいくつもの感冒薬のコマーシャルが広告合戦を展開し始めたが、CMソングになんと「軍艦マーチ」を採用したメーカーが現れたのには驚いた。
連日何10本もの「軍艦マーチ」編CMをあちこちのチャンネルで放送しつづけている。

チアガール風の若い女性たちが、やはり日本風の商品名をつけたそのメーカーの薬を手に、「軍艦マーチ」の曲にのって軽やかに踊りながら、風邪に負けないよう北京語の替え歌で応援するイメージだ。
台湾の若い消費者に「軍艦マーチ」が日本のイメージを印象づけるものかどうかは分からないが、少なくとも「軍艦マーチ」に妙な嫌悪感を抱かない消費者が多いことだけは確かなようだ。

実は台湾では、宴会のあとなどに酔った年配の台湾人のおじさんたちが、肩を組み合って日本の「軍歌」を日本語で高らかに合唱する光景が珍しくない。
旧正月を控えて忘年会シーズンの今はなおさらだ。本人たちは「これが俺達の青春の歌だ!」と胸を張る。隣の宴席や店の人からから怒鳴り込まれやしないかとヒヤヒヤする必要はない。
仮に日本の軍歌と知っていても、台湾では決して「植民地時代を賛美するな!」とか「日本の軍国主義の手先!」などと指摘されることはない。だれもがその点、寛容なのだ。

かつて香港で日本人留学生たちが、「香港のカラオケに日本の軍歌があるのは歴史反省をしていない日本人として恥ずかしい」として、軍歌の全面削除運動を展開したことがあった。だが台湾では台湾人自身が好んで、カラオケで軍歌を歌いまくる。
それが良いか悪いかは判断がつきかねるが、他のアジア諸国とは過去も含む「日本」に対する感情で際立った差異があることは疑いようがない。

ある年配の台湾人は、日本語でよくこんなジョークをとばす。「日台関係は錆びたハサミだな」。その心は「切っても切っても、どうにも切れない」のだそうだ。1895年から終戦の1945年まで50年にわたって日本が統治した台湾。地理的にも隣接する台湾の人々の心には、時代を超えた遺伝子が宿っているようだ。

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